第8話　

帰国前、江上紗代が全力で狙っていたのは、実は五十嵐悟ではなく、五十嵐彰だった。

だが、彼女の必死な誘惑にも、五十嵐彰は一瞥もくれず、それで江上紗代は仕方なくターゲットを五十嵐彰の弟に変えざるを得なかった。

なるほど、私が五十嵐彰の子を妊娠していると知った時の彼女の憎しみの深さが説明できる。

どうやら、どの角度から見ても、私のことを敵と見なしていたようだ。

三か月後、私は部屋で大声を上げた。

「五十嵐彰！ ここに来なさい！」

五十嵐彰が慌ててドアを開け、私の手にある妊娠検査薬を見た瞬間、避妊具を破ったことがバレたと悟った。

彼は急いで私を抱きしめ、優しく言い訳を始めた。「ごめんね、陽菜。僕が不安になりすぎてしまったんだ。君を子供で繋ぎ止めようとしたけど、僕は本当に君と子供を愛しているんだ。叱るのも殴るのも好きなだけしていいから、でも体を壊さないで......」

仕方なく、私はまた仕事を辞め、家で養胎することにした。

だが、家にいても私は男に頼り切ることはしなかった。私は投資を始め、数億円を稼いだ。

おそらくこの間、私は投資に忙しく、江上紗代を無視していたため、危うく大きな過ちを犯すところだった。

二人目を妊娠していた江上紗代は、このたび港城で検診を受け、男の子だと確認された。

彼女は大きなお腹を抱えて、再び五十嵐家の古宅に住み込んだ。

その日、彼女は燕の巣のお粥を手にして、十分に態度を整えて私に謝罪した。

「陽菜、ごめんなさい。この数年、私はずっと意地を張っていた。どうか許してくれないかしら」

「今日、この燕窩のお粥を飲んでくれれば、これから私たちは義姉妹として仲良くやっていけると思うの」

目の前のお粥は薄い色をしており、質感も滑らかで、一目で上等な燕窩だとわかる。

私はそれを手に取り、江上紗代はにっこりと笑った。

しかし、次の瞬間、私はその燕窩を彼女の頭の上にぶちまけた。粘り気のあるお粥が彼女の頭からポタポタと垂れた。

「きゃー！」

江上紗代は悲鳴を上げ、信じられないという表情で私を見た。粘り気のある燕窩は彼女の髪を伝って流れ落ち、彼女をひどくみすぼらしくさせた。

私のお腹の中の子を傷つけようとすること、それは私の限界を超える行為だ。

彼女が欲しがっていた金銭、地位、名声、そして五十嵐悟の愛、私は全て奪い取ってやる。

「江